遂にクリアしました。
ラストオブアス2(The Last Of Us 2)。
世間では賛否両論のレビューが広がり、プレイヤーによって評価や感想が大きく異なる今作ですが、僕個人としては「充分楽しめた」という感想です。
今作の主題が「心を揺さぶるような復讐劇」ということもあって、序盤からガッツリと僕らの心を抉りにかかってきます。特に前作をプレイした直後の場合、驚きも数倍以上に増幅するほどでしょう。
「復讐の目的」と「戦う理由」
物語序盤、ジャクソンでの生活にすっかり慣れ親しんだエリーとジョエルですが、2人の仲はどこか冷めた印象。
前作では親子にも似た「互いを思いやる親密な関係」から一転、「反抗期の娘」と「娘に心を開いてほしい父親」のような構図に変化していました。
ジョエルは、ジャクソン周辺のパトロールで感染者たちに襲われていたアビーという名の女性を助け出しますが、アビーは自身を助け出してくれたジョエルを拉致し、仲間と共に殴打。
※この時点では、ジョエルがここまで痛めつけられている理由は語られていませんが、前作プレイ済みであったため、ラストを考えるとファイアフライの生き残りがジョエルに復讐をするために追っていたと推察できる。
パトロールから戻ってこないジョエルとトミーの身を案じ、エリーは1人で彼らの足跡を辿ります。すると、辿り着いた先で衝撃の瞬間を目にすることに。
アビーにより捕まり、酷い拷問を受けて倒れ込むジョエル。
エリーが「やめてっっっ!!」と叫ぶも、アビーは近くにあったゴルフクラブを力いっぱい両手で握りしめて、ジョエルの頭を殴打。
エリーはアビーたちに気絶させられ、目を覚ますとジョエルが見知らぬ奴らに殺害されたという現実に呆然とすると共に、アビーたちへの復讐を心に強く誓う。
こうして開始された衝撃のストーリー。
エリーにとって父親にも等しい人を目の前で無惨に殺害されたことで、彼女は「ジョエルの仇討ち」という復讐心を「戦う理由」として密かに心を寄せるディーナとともにアビーたちの足跡を追う旅へ。
物語序盤からガツッとプレイヤーの心をへし折りにくるこの鬼畜にも似たストーリー展開で手に汗握るものがありました。
この時点で心が折れてしまうとこのゲームへのヘイトが溜まり、低評価を押したくなるのかもしれません。
「奪われる」「奪い返す」という負の連鎖
復讐の連鎖はどこかで断ち切らない限り、いつまでも続きます。アビーパートを進めていくことで、ジョエルへの復讐を果たしたアビーは、ファイアフライに所属していた医者の娘であることが判明。
※【ファイアフライ】ワクチン開発のためにエリーを連れて行った先にラストオブアス無印にてジョエルが壊滅させた一団
父親の復讐を果たすためジョエルを追うアビー
ジョエルの復讐を果たすためアビーを追うエリー
互いが抱える大事な存在を奪われた者同士、仕返しに相手の命を奪おうとする展開へと続いていく。結果的に、彼女らの復讐に巻き込まれた人達の多くが命を落とすことに。
ワクチン開発のためとはいえ、これまで旅してきた娘にも似た存在のエリーを犠牲にできなったジョエル。
尊敬する父を亡き者にしたジョエルを追うため、腕をぶっとく鍛え上げゴリラに変貌したアビー。
紆余曲折を経て、あの日のジョエルが何をしたのか知ってしまったが「許せないけど、許したいと思ってる」と考えていたエリー。
「誰が悪い」のか、「誰の責任」なのかといった表面的な問題ではなく、人なら誰しもが持っている「人を想う心」が様々な形で具現化した結果が生み出した行動、そして結果なのです。
エリーとアビーの対比構造
エリーパート
●(序盤)父のように大事な人の命を奪われる
●(中盤)復讐のためにアビーを追う
●(終盤)守るものを失い、孤独と復讐心を抱えながら戦う
アビーパート
●(序盤)父親を奪われた復讐を遂げる
●(中盤)新たにヤーラ・レブと出会い守るものを手に入れる
●(終盤)守るもののために、自らを犠牲にしてでも最後の戦いを受け入れる
二人の邂逅パート
●(1回目)仲間を亡き者にしたエリーとその仲間を追い詰めるアビーとレブ
●(2回目)復讐心に駆られ、アビーを追い詰め最後の戦いを繰り広げるエリー
このパートは特にキツかった、、、
どちらもプレイヤー自身が操作し、出来事を追体験しているため、互いの友人を奪った相手を許すことなんてできない。
けれども、逃げるわけにはいかない。
感染者相手だと連打できるボタンが、エリー相手・アビー相手だと叩くスピードが大きく鈍化していたのが自分でもハッキリと感じられました。
上述のように、エリーとアビーは対比構造となるようストーリーが展開されていきます。歩みを進めていくにつれて、孤独になっていくエリー、守るものを手に入れるアビー。
そんな彼女たちの足跡を追いかけていくにつれて、どちらか一方に勝ってほしい、復讐を成し遂げてほしいと思うことは無くなり、「もう、、、やめようよ、、、」という切ない気持ちで胸が一杯になる内容です。
個人的な評価
世間ではポリコレ配慮だとか、LGBTQ全面に押し出しすぎといったゲームの1要素に過ぎない部分が批判されていたり、上述の鬱展開に心をポッキリと折られてしまったプレイヤーの批判レビューが咲き乱れたりしています。
僕個人の感想としては、「ストーリー面・戦闘面を中心に、最初から最後まで一貫して楽しんでプレイできたので大満足」といったところです。
ラストオブアス無印・ラストオブアス2における荒廃した世界観の中で生きる人達は、集落を形成し、そのコミュニティ内で一定の秩序を保って生活しています。先の見えぬ感染者との戦いを通し、共に暮らす人達を大切に想い、1日でも長く生き延びようとしているのでしょうか。
今作では「復讐劇」を起点として怒涛のストーリー展開について行くのがやっとでしたが、一通りプレイし終えて振り返ってみると、ジェットコースターを降りた瞬間の爽快感・開放感が心の中に広がっていました。
まとめ
多くのプレイヤーが期待していたであろうジョエルとエリーの旅路。それもストーリー最序盤でガッツリ否定。
心の拠り所だったジョエルがいない中での不安、アビーへの復讐心を抱いて歩んできた道のりの果てに待っていたのは何だったのか。
考えれば考えるほど深いテーマであり、プレイヤーは彼らの物語を追体験することしかできないため、彼らが他の行動を取った場合の結果は想像に任せることしかできませんが、、、
もしも
ジョエルがエリーを犠牲にしてワクチン開発が進んだ世界だったら?
アビーが復讐ではなく元恋人オーウェンと家庭を築くことを選んでいたら?
エリーが農場でディーナとJJの3人で静かに暮していたら?
その時点で、今作の「復讐劇」をテーマとした物語は終焉を迎えていたでしょう。どこにでもエンディングは存在し得たのです。それでもプレイヤーの意図するストーリーとは真逆と言われるほどの結末を描いたのは、このゲームを通して訴えたいテーマがあったからこそだと感じられます。
2時間で完結する映画や、1シーズン12話ほどの海外ドラマであればこれほど大きな波紋を呼ぶことも無かったかもしれませんが、実際にコントローラーを握りしめながら、登場キャラと一緒になって喜んだり、悲しんだり、憎んだり、切なくなったりしたゲームはここ最近では「ラストオブアス2」以外にありません。
シェイクスピアのリア王・ハムレット・オセロー・マクベスといった4大悲劇のように、全ての物語が必ずしもハッピーエンドとは限らないことを知っていれば、こうしたやるせない思いになるゲームも一つの表現・一つの作品であると感じられるのかもしれません。
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