色んな意味で期待を大幅に裏切った実写版映画「バクマン。」の感想ー実写版では恋い焦がれるサイコーを亜豆が待ってくれないらしいー
“ずっと、、、待ってる、、、”
予告編からずっと気になっていた実写版映画「バクマン。」を公開初日に観に行ってきた。
物語の主人公である真城最高(ましろもりたか)は佐藤健、高木秋人(たかぎあきと)は神木龍之介がそれぞれ演じる。ヒロインである亜豆美保(あずきみほ)は小松菜奈。
原作が非常に面白かった作品だけあって、かなりの期待を寄せて映画を観た感想を率直に書きたい。
【チェック】
「DEATH NOTE」の原作コンビ、大場つぐみと小畑健によるテレビアニメ化もされた大ヒット漫画を、『モテキ』などの大根仁監督が実写映画化した青春ドラマ。性格の違う高校生2人がタッグを組み漫画家への道を歩んでいくさまを、大根監督ならではの巧みな映像表現を駆使して描く。週刊少年ジャンプでの連載を目指して日々奮闘する漫画家コンビには、佐藤健と神木隆之介。実在の漫画作品や出版社が実名で登場するほか、劇中使用される漫画の原稿を小畑自身が描いている。
【ストーリー】
優れた画力を持ちながら将来の展望もなく毎日を過ごしていた高校生の真城最高(佐藤健)は、漫画原作家を志す高木秋人(神木隆之介)から一緒に漫画家になろうと誘われる。当初は拒否していたものの声優志望のクラスメート亜豆美保への恋心をきっかけに、最高はプロの漫画家になることを決意。コンビを組んだ最高と秋人は週刊少年ジャンプ連載を目標に日々奮闘するが……。
評価★★☆☆☆(星2.5)
大筋では原作準拠…しかし、、、
原作の大きな目的は、サイコーとシュージンが漫画家になるというバクチを売って、2人で描いた漫画がアニメ化すること。そして、そのアニメに亜豆がヒロイン役で声優を担当して、サイコーと亜豆が結婚するというもの。
…そのはずが、今作では恋愛要素がほとんどなく、蒼樹紅や見吉香耶、岩瀬愛子は一切登場しないまま、物語が淡々と進んでいく。
サイコーが亜豆のことを好きでいるのは原作通りだが、亜豆は声優になるという夢のためならサイコーのことを置き去りにすることも躊躇わない鬼畜っぷり。
原作自体の完成度が高いこともあって、登場するキャラクターの性格も話にマッチしてはいるが、配役ミスな印象が拭えない。
服部さんも熱意らしい熱意を持っておらず、平丸もイケメン風なキャラからかけ離れたニート寸前の風貌。
リアルさを表現するのか、原作っぽさを表現するのかはっきりとすべきだったのに、両方からのいいとこ取りを狙って、失敗した感がにじみ出ていたように感じた。
サイコーとシュージンのキャストが反対?
基本的に、サイコーは童顔で身長はシュージンより低く、反対にシュージンはスリムで高慎重でやや大人びた風貌。
今回の2人の配役に関して言えば、2人を入れ替えた方がマッチしていたのだろう。
目つきだけは佐藤健とサイコーが合っているように思えるが、シュージンの方がハマり役だったのは間違いない。
他のキャストについては、原作の雰囲気を重視した配役と、起用したかった俳優を重視した配役が混在しているような印象を持った。
特に、服部哲は山田孝之を起用したかっただけなのではないかと感じてしまったのは僕だけではないはず。
“亜城木夢叶わない?”
先に書いたように、恋愛要素が大きく省かれているためか、実写版映画「バクマン。」では、ペンネームの下りは一切ない。
一切ないどころか、ペンネームを使ってすらいない。
真城最高、高木秋人のままだ。
こうなると、3人のキャラに対し、「応援しよう」という気持ちになるのは難しい。小さいことだが、原作「 バクマン。」にとってはとても大事な要素のはずだったのに…
原作の最終目標は、あくまでもサイコーと亜豆の結婚であって、漫画家になることと声優になることはその目的を叶えるための通過点にすぎない。
“夢が叶うまで、会うのは禁止”
そんな奥ゆかしい言葉は今作の亜豆の口からは一切出て来ない。
むしろ、頻繁に会うし、頻繁に電話もする。
これでは普通の高校生の普通の恋愛ではないだろうか。
亜豆が待っててくれない
今作では、前半から中盤にかけて、亜豆は「待ってる」「待ってる」「待ってる」と必要以上に連呼する。くどいくらいに連呼する。
ところが、高校に通いながら寝る間も惜しんで原稿を描き続けていたサイコーが血尿を出して倒れてしまった時に、病院にやってきた亜豆は一緒に原稿を描くことはせず、、、
“ずっと待ってるなんて無理。先に行くね”
このように仰った後に半目で涙を浮かべてカーテンにヒラヒラされながら去っていく。
そう、3次元の亜豆さんはせっかちなのか、飽き性なのか、自分の夢の障害になるくらいなら、ずっと大好きだったはずのサイコーをあっさりと置いていくことができるようだ。
演出は面白く、脚本は今ひとつ
演出に関しては、ここ最近の邦画にしては演出はかなり凝っているように感じた。漫画的な表現をふんだんに盛り込み、絵的には退屈になりがちな「リアルな漫画家たち」を描くにあたり、現実っぽい設定の中にも、躍動感や感情表現を上手に表現していて、映像を観る分には飽きなかった。
背景に漫画のイラストを表示したり、二次元を三次元風に見せたりと、これからの邦画の可能性を飛躍的に高めてくれそうな印象を持てる。
反対に、脚本は正直言って今ひとつ。
上でも書いたように、原作「バクマン。」の本当のゴールは漫画家になることでも、新妻エイジに勝つことでもない。
『子供の頃大好きだった叔父さんが叶えることのできなかった夢を、甥っ子であるサイコーが叶えること』こそが原作で描かれる大事な確信のはずが、「漫画家になるって楽じゃないけど、頑張れば夢は叶うよ!ヤッタネ!」くらいの軽いノリ。
そういう面では褒める部分はなく、脚本だけで見たら星は1以上にすることはできなかったと思う。
原作「バクマン。」が好きな方は、実写版映画「バクマン。」は、“(見た目も含めて)リアルな漫画家と編集者がバクマンごっこをする全く別次元の映画”くらいの感覚で観ることをオススメしたい。
更に言えば、無理して観る必要も無いと思う。
はじめまして。
亜豆の「ずっと待ってるなんて無理。先に行くから」という台詞は、そのカットのあとにも画面に写る、サイコーとシュージンの漫画の亜豆そっくりと言われるヒロインの台詞と全く同じです。
そしてエンドロール終わりのラストシーンで「ずっと待ってるなんて無理」と言った亜豆の姿を漫画にしたと思われるコマで、そのヒロインは「ずっと待ってる」と言っています。
亜豆の「ずっと待ってるなんて無理」という台詞がそのままの意味だとは亜豆もサイコーも思っていないと私は思います。
らりるさん
コメントありがとうございます!
そうですね。このシーンは色んな考え方ができそうです。
原作を抜きにして、この映画単体として考えた時には、きっと『私はあなたの先に行く。だから、追いついてきて(追い抜いて)』という捉え方も一方では僕も考えていました。
原作とは違った面白さでもあり、含みを持たせる言い回しと考えると新らしい解釈ができて良さそうですね♪