映画「ズートピア」を観てきた感想をまとめてみましたー夢を見ることの大切さと綺麗な構成力に感心しましたー
“ウサギだって、警察官になれるんだから!!”
ディズニー作品の映画「ズートピア」を観てきました。動物たちがメインキャラクターなので、「マダガスカル」や「ペンギンズ」といったほんわか系のアニメ映画なのかと思って観に行ったら、良い意味で予想を裏切ってくれました。
【YouTube】「ジュディの旅立ち」
【チェック】
あらゆる動物が住む高度な文明社会を舞台にした、ディズニーによるアニメーション。大きさの違いや、肉食・草食にかかわらず、動物たちが共に暮らすズートピアで、ウサギの新米警官とキツネの詐欺師が隠された衝撃的な事件に迫る。製作総指揮をジョン・ラセターが務め、監督を『塔の上のラプンツェル』などのバイロン・ハワードと『シュガー・ラッシュ』などのリッチ・ムーアが共同で担当。製作陣がイマジネーションと新たな解釈で誕生させたという、動物が生活する世界のビジュアルに期待が高まる。
【ストーリー】
ハイテクな文明を誇るズートピアには、さまざまな動物が共存している。そんな平和な楽園で、ウサギの新米警官ジュディは夢を信じる一方、キツネの詐欺師ニックは夢を忘れてしまっていた。そんな彼らが、共にズートピアに隠された事件を追うことになり……。
評価★★★★★(星5つ)
さすがディズニー作品というべきか、この作品の一番の良さは内容以上に「構成力」であるように感じました。登場するキャラクター同士の相関関係や、物語の中で無理なく自然に登場し、重要な情報源になったり、キーパーソンになったりと「無駄のない構成」に感心しました。
主人公は警察官を目指すウサギ「ジュディ」
「肉食動物」と「草食動物」が共存するよう進化を遂げた動物たちの世界。どんな動物だって、なりたい職業に就くことができる自由な世界。一見楽しそうなこの動物たちの楽園も、「肉食動物」と「草食動物」の間には肉体的な“差”がありました。
爪や牙といった「肉食動物」に備わった「強さ」の象徴、犯罪者を取り締まる警察官になるには、相応の「強さ」を持ち合わせる必要があるようです。ウサギのジュディは、「草食動物」故に、こうした爪や牙といった「戦う力」は有していませんでした。
生まれ持っての“差”を考えないようにして、ジュディは「ズートピア初のウサギの警察官」になることを夢見て、警察学校に入学してから一生懸命努力していきます。こうした姿を見ると、「夢を持つこと」と「夢を叶えるために努力を続けること」の大切さに改めて気付かされる思いがします。
警察学校に入学したジュディは、「肉食動物」と「草食動物」の間にある生まれ持っての“大きな差”を埋めるため、様々な工夫を凝らし、晴れてトップの成績で警察学校を卒業します。自分に「足りないもの」があるならどうしたらそれを補うことができるか考え、行動に移す姿勢は、子どもが見ても大人が見ても、胸に響くものがあるように思います。
ずる賢いけどどこか憎めない詐欺師のキツネ「ニック」
キツネは「ずる賢く」「冷酷で」、そして「嘘つき」というレッテルが貼られているようです。
主人公のジュデイは、子ども時代に幼馴染のキツネにいじわるをされたこともあり、「悪いキツネ」に対して心配する両親は、ジュディに「キツネ避けグッズ」を渡そうとしたりしていました。それだけ動物たちの世界では、「キツネ」は警戒の対象であり、信頼に足りない種族であるということがわかります。
新米警官になり、駐車違反の取締に明け暮れていたジュディが出会った詐欺師のキツネ「ニック」は、12歳の頃から悪い商売に手を染め、大金を稼いでいたとのこと。犯行現場をジュディに目撃されるも、それを華麗にかわしたと思ったら、ジュディの作戦に見事嵌められ、「行方不明者捜索事件」の手伝いをさせられる羽目になります。
しかし、ニックはこの捜索事件においてその賢さと度胸から、迫り来る苦難をやり過ごし、結果的にジュディを救っていきます。ウサギとキツネの掛け合いにドキドキするも、ホッとして。いがみ合っては、仲直りして。こうしたジュディとニックの「相棒」的なタッグ感に、観ている方もワクワクさせられっぱなしになりました。
ポイントは「物語の構成力」
「ズートピア」の一番の魅力は、映画の中で生き生きと動き回る動物たちよりも、ジュディとニックの冒険よりも、「物語の構成力」にあると感じました。登場キャラクターの生い立ちから、物語の節々で発生する小さな事件が、結果的に大きな事件を暴く手がかりになっています。
無駄のない登場キャラクターたち。誰が味方で、誰が敵で、どんな情報を伝え、聞き出すべきか。物語自体も常に二転三転し、その上で余計な描写は丸っとカットし、テンポよく飽きずに映像を観続けることができる作りになっていました。
そういったスリリングな展開に息を飲みつつ、ディズニーらしいジョークも織り交ぜながら、物語の終着点へと進んで行きます。意識しないで見ていると見落としてしまいそうな多数の伏線に注意しながら、先の展開を想像して観るのも楽しいかもしれません。
何よりも、この作品の監督はあの「塔の上のラプンツェル」を手がけたバイロン・ハワード監督と、「シュガー・ラッシュ」を手がけたリッチ・ムーア監督。そもそも製作段階からして、面白くないはずがない作品ですね。
実は本当の主人公はジュディではなくニックだった!?
「ズートピア」に関する記事を参照していたところ、マイナビニュースで面白い記事を見つけました。それは、「ズートピアの主人公はキツネのニックだった」というもの。
【マイナビニュース】「ディズニー最新作『ズートピア』主人公は当初、ウサギのジュディではなくキツネのニックだった!」
――最初はニックが主人公だったんですね。ニックからジュディに変えたのはなぜですか?
旧バージョンでは、ニックは今のような皮肉屋で、自分の住んでいる街が嫌いだったので、ズートピアから出たいと思っていたんです。そうすると、観客もどうしても彼を通してズートピアを好きになれなくなってしまい、それではダメだと思ったのです。主人公は物語を引っ張っていくものなので、楽観主義者のジュディのような、ズートピアの最もいいところを見いだしてくれるようなキャラクターが必要で、そのあとに世の中というものは目に見えるほど単純なものではないということがわかってくるようにしました。
――この物語では、人間社会と同じように、”違い”から生まれるさまざまな偏見が描かれ、生きていく上で大切なメッセージが込められています。”偏見”の問題をテーマにした理由は?
バイロン・ハワード:動物を1年くらい研究していく中で、哺乳類の中では捕食する側が1割、捕食される側が9割ということに気付いたんです。この自然界の事実をもとに、時として対立関係にある2つのグループが進化して一緒に社会を築いていった場合、もともとあったお互いに対する恐れや不信感は心の中に残っているといったストーリーを思い付きました。
(中略)
――主人公を逆転させたとのことでしたが、たくさんいる動物の中で、ウサギを主人公にした理由は?
リッチ・ムーア:(ジュディのぬいぐるみを動かしながら)キュート! カワイイ!(笑)
バイロン・ハワード:そうですね! かわいいというのも理由の一つです(笑)。ウサギはかわいらしくて小さくてふわふわしている。この物語では、ウサギのジュディが、周りの人たちからウサギだからとバカにされ、勇ましい警官にはなれないだろうと見られてしまいますが、その彼女が主人公であることによって、偏見や先入観からいろいろな障害や困難を経験した人たちに理解してもらえるものになると考えました。
自然界では、捕食する側の「肉食動物」は動物全体の1割しか存在せず、反対に捕食される側の「草食動物」全体の9割にも及ぶということも上のインタビューの中で書かれていました。作品の中でも副市長のベルウェザーも同様の発言をしていたことから、この作品では「数の優位性」と「個体の強さとしての優位性」がぶつかり合いもテーマの一つだったことが分かるかと思います。
まとめ
「可愛い動物たちに癒される映画」というよりも、「動物たちの中にも差別や対立関係があることを認識させられる映画」であると言った方が正しいかもしれません。もちろん、スクリーンの中をリアルに動き回る動物たちの姿は、勇ましくも可愛らしい気持ちを与えてくれます。
子どもが見ても、大人が見ても、「自分らしく在ろうとする姿勢」への感動と、「違いを認める心の広さを持つこと」、そして「夢を持ち、実現に向けて努力すること」の意味を教えてくれるいい作品でした。なお、最後の方ではほっこりとした感情をもたらしてくれる素敵なシーンも盛り込まれていましたので、ぜひとも裏主人公のニックを応援しながら本作品をご覧になってください。