課金することがゲームを楽しむ上で必須となりつつある現状の異常さについてーフルパッケージのゲームにお金を出した上で、さらにお金を要求されるってどうなの?ー
“この追加ストーリーをプレイするためには1000円お支払いください”
ここ数年の技術の進歩で、ゲーム市場はとても大きく変化してきました。ドット絵のファミコン・ゲームボーイ・スーパーファミコンから、フルポリゴンのセガサターン・ニンテンドー64・プレイステーション、そして様々な技術の集大成が詰め込まれたニンテンドー3DS・PS VITA・XBOX360・プレイステーション4に至るまで、ほんの20数年足らずでかなりのハードが発売され、それと同時に数多くのソフトが誕生してきました。
今でこそ、ほぼ必ずどの家庭にもインターネット環境が整っていて、出先でもマクドナルドやスターバックスなどで無料のWi-Fiが使用できるほどです。
そうした中で、最近発売されるゲームの多くが「追加シナリオ」「追加コスチューム」「追加キャラクター」といった様々な「追加」要素を前提として製作されるようになってきています。スマホゲームの代名詞とされるモンストやパズドラなどは、あくまでも「基本プレイ無料」とした上で、“早く強くなりたい場合はお金を払うことでスピードが短縮されますよ”としてオーブや魔法石といった商品を売りだしています。この場合は、ユーザーの良識の範囲で楽しもうと思えば、極論を言えば1円も出さずに楽しむことができます。
※ただし、一度箍(タガ)が外れて課金を始めてしまうとその楽さにどっぷり浸かってしまう方もいるようなので、注意が必要です。
スマホゲームの課金は闇への入り口です。人は一度美味しい思い、楽な思いをしてしまうと、中々そこから抜け出せなくなり、ふとしたタイミングで「ちょっとなら大丈夫、少しだけ課金しよう」と自分への言い訳を見繕っては、繰り返し繰り返し課金を繰り返すようになるのです。
「ソシャゲ 闇」と検索して僕のブログ記事を訪問される方も多いようです。それだけスマホソーシャルゲームに違和感や不信感を抱いている方もいるということがよくわかりますね。このスマホソーシャルゲームに関する話については以前のエントリをご覧いただけると幸いです。
【スマホソーシャルゲームの課金ガチャって闇が深いよねーすっごい単純計算で1回500円〜600円くらいかかってるんだよー】
こうした「基本プレイ無料」と謳うゲームは、最終的にどこかでプレイヤーからお金を出してもらわないとサービスの継続が困難となるため、課金要素を設けることはわからないでもないことです。一方で、パッケージソフトして販売されるコンシューマーゲームについてはどうでしょう。
【DAMONGE】「『課金要素はゲームを楽しむ上で必須となってはならない』、Take-Twoが課金戦略について語る」
《上記サイトより引用》
「魅力的なコンテンツがあるからこそ、このアプローチは機能する。コアゲームにおいてカジュアルゲームが採用しているような、進行をブロックする形でアプローチしても成功できない。
カジュアルゲームがそれで成功しているからといって、ゲームの進行をブロックするような要素を収益化のために設置したとしよう。我々はこの方法はまったく成功しないと考えている。
ゲームの必須要素からは課金要素は切り離すべきだろう。
課金要素はゲームプレイ体験を強化する目的で提供されるべきで、ゲームを楽しむために必須な要素とするべきではない。あくまでゲームの楽しさを強化する方向に向くべきだ。」
確かにゲーム進行の妨げとなるような課金要素を許してはいけないように思います。そもそも、パッケージゲームは本来それ単体で完結するように製作されていなければならず、ソフト1本分の価格を支払うことで、そのソフトで本来楽しめるストーリーは全てプレイできなければパッケージソフトとしての意味は失われます。
いわゆるDLC(ダウンロードコンテンツ)と呼ばれる「追加シナリオ」「追加コスチューム」「アイテム課金」といったものは、ユーザーからしたら《最初から含めることができたものを後付けしてお金を巻き上げようとしているんじゃないの?》と捉えられてしまいます。
最近の例で言えば、2013年に発売された「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル(ASB)」(製作:サイバーコネクトツー)が挙げられます。このゲームの課金要素としては、大きく分けて「追加キャラクター」と「アイテム課金」の2点が挙げられます。そもそもこのゲーム本体の価格は定価で約8000円で33名のキャラクターが最初から使用できるのですが、追加のキャラクターを購入しようとすると1体あたり600円も請求され、さらにはキャラクターのボイスをアンロックするために数々のスマホソーシャルゲームで採用されているスタミナ制が採用され、そのスタミナを回復させて効率よく集めるためにはアイテム課金が必要となる仕様で多数のユーザーから反感を買った事件がありました。
特にジョジョシリーズに関しては、ファンによって好きなキャラクターはそれぞれ異なっていて、自分が好きなキャラクターを自由に使いたいという要望が多いことは制作側もわかりきっているはずなのに、このような失態をしてしまったのは浅はかすぎるとしかいいようがない気がします。
格闘ゲームで言えば、主要キャラクターのアンロック、RPGで言えばメインシナリオやストーリー進行上の強敵を倒すためのアイテムなど、「そのゲームの本質に関わる要素」に課金を煽る(または課金しなければ楽しめない)ように製作することこそユーザーに対するゲームメーカーの裏切り行為と言ってもいいでしょう。
確かに高騰する開発費をどこかで回収しなければ、ゲームメーカーも経営が立ち行かないことは理解できます。さらには中古市場も経営上のライバルとして立ちはだかり、スマホゲームの台頭もあって各社は互いにパイの奪い合いをしていることでしょう。
ただ、そういった外部環境的な事情と、「コンシューマー向けのパッケージソフト」を購入するユーザー側が求める要素とは全く噛み合うことはないことも現実なのです。
少なくとも、「パッケージソフト」として販売するゲームに関しては、各種ゲームメーカーもしっかりと考え直して、思い出に残るような感動的なストーリーと、魅力的なキャラクター、そして目新しいゲームシステムの導入といった《原点回帰》を意識したゲーム製作に立ち返ってほしいと思います。
いつの時代も、「本当に良いモノは売れる」というのは真実です。安易に儲けを追求するのではなく、ユーザーの心を奪うほどの信念を携えたゲーム製作に身を乗り出してくれるようになってほしいものですね。