プレゼンや講演の時に発症する『えーあー症候群』の正体とは?ー「無意識」と「心の働き」の間を探るー
“え〜、、、それでは、あ〜〜〜、これから発表を、、え〜〜…”
photo credit: Mud Fest 2008 via photopin (license)
小学校の頃、朝の朝礼で校長先生が話をする時に「え〜、あ〜、」という無駄な間投詞が何度使われているか数えてみたことがある。うっすらとした記憶だが、およそ10分間程度の話の中で、100回近い「え〜、あ〜、」が無意識に発せられていることが判明し、とても驚いたものだった。
学生時代の友人のプレゼンや、テレビでアナウンサーが報道している時も、大人になってからの講演会等でも、この『え〜あ〜症候群』に罹患している人の多さに少々うんざりすることも。話している内容がどんなに素晴らしくても、話の中に自身が無意識で発する不要な雑音が混じってしまうことで、相手に内容がほとんど伝わらなくなることだったありうる。
そこで、この『え〜あ〜症候群』がどういった場合に発症するのか、その原因を考えてみたい。
「無意識」に発せられる「え〜、あ〜、」という間投詞
原因を探るため、Webマガジン『KZ-plus』さんの記事を参照したところ、非常に納得のいく内容でまとめられていた部分を引用したい。
高津:「えーあー症候群」の特徴でもあるんですが、これらの間投詞は身体器官の自律を超えて発声されるんです。要は、無意識に出ちゃう。もっと言えば、やめようと思ってるのに、つい出ちゃう(笑)
今城:あ、そうなんです! えー・あー・えーとって、言わないようにしようしてても、ついポロッと言っちゃうんです!これって、なぜですか?
高津:それは、えー・あー・えーとが、心の働きによって出ているからなんですよ。間投詞は感嘆詞なわけで、本来は驚きや感動で心が動いた時に出るものですから。
今城:え? 無意識なのに、心の働きなんですか?
高津:無意識は、自覚はないけれど何かが作用しているということです。
そしては、話は心の働きについて続いていく。
簡単にまとめると、「上がる」とか「テンパる」といった状態に限らず、以下のような心の働きによって無意識に、無自覚に、無作法に『え〜あ〜症候群』が発症するというのだ。
①【発症時】
「次に言うべき言葉が思い浮かばない」
↓
②【心の働き】
「早く話を終わらせたい」、「続きの言葉を発したい」、「間が怖い」等
↓
③【その原因】
「焦り」、「重圧からの解放」、「嘘やごまかし」、「暗記した原稿内容の忘却」他
確かに、僕も『え〜あ〜症候群』の発症原因は上の通りだと感じる。人間誰しも、人前に立って話をすることが得意であるわけでもなく、引っ込み事案な人やあがり症の人まで様々だ。しかし、社会人になると本人の性質や意思とは関係なく発表の役割を振られたりすることも多々ある。
こうした時に、どうしたら少しでも「え〜、あ〜、」という間投詞を減らし、スムーズに話すことができるようになるのか考えてみたい。
対策①【事前準備が不足していないか】
自分が作成した資料を使っていたとしても、その内容をきちんと理解した上で話すことができているだろうか。参考にした書籍やデータを「とりあえずまとめるだけまとめた」という状態であったり、「任されただけだからやる気がでない」といった状態であったりすれば、当然のことながら話の内容を事前にまとめることなどできないはずだ。
このような状態に陥る前に、ぜひとも『発表内容をしっかりと理解すること』と『要素を箇所書きしておくこと』をしてほしい。この2つをきちんと意識して事前に準備することで、【発表=要素の組み合わせ】にしか過ぎないことがわかる。
例えば、自己紹介をする場合には以下のような要素に分解することができる。
・名前
・所属や仕事内容
・趣味
・好きな本や映画
・生い立ちや信条
他にも多くの要素に分解できるが、とりあえずはこれだけあれば十分だ。このように分解した要素の中から、発表の時間に沿って、いくつかを選んで箇所書きにしておくだけでいい。そして、選んだ要素の中で、優先度の高い内容から順に内容を組み立てていこう。
対策②【とにかく、とにかく短く】
『え〜あ〜症候群』に罹っている人の多くは、一文が長い。とにかく長い。
“〜であるからして〜、え〜、〜〜による効果を発揮するため〜、、あ〜…”などと、『接続助詞』を無意識に使って、一文をとにかく長く続けて話そうとする。そのような傾向にある人は、無意識のうちに、「間」を恐れてしまっているのかもしれないと自らを疑ってほしい。
日常会話では発しないような間投詞が発生するのは、「自分一人の力で、聞き手全員を相手にしなければならない」という緊張感からきていることが多い。しかしながら、聞き手全員を相手にしなければいけないということを考えすぎるあまりに、『自分が頑張って話さなければ!!』という意識が働き、それが結果として接続助詞の多様化を生み出すのではないだろうか。
ハッキリ言って聞き手は、発表者のことなど本人が気にしているほど興味はない。むしろ、頭の中でゆっくり整理するような「間」も用意できないような発表や講演であると判断した瞬間に、心の中では“早く終わってくれないかな”と考えるようになってしまう。
そのため、『一文はとにかく短くまとめること』を意識し、それにより生まれた時間の余裕を聞き手の咀嚼時間や注意を惹くための『間』として活用しよう。
対策③【語彙力は十分に有しているか】
同じ内容を第三者に伝えるにしても、『言い方』一つで受け手の感じ方は大きく異なる。その『言い方』を意識して変えることができない人は、「そもそも語彙力は十分に有している状態か」ということを考えて欲しい。
例えば、球技の中でもチームプレイより個人プレーを好む人が、その理由を述べる時の一言を考えてみよう。
「僕は野球やサッカーよりなんかより、テニスの方が断然好きです」
「僕は集団で暑苦しくプレイするより、一人爽やかにプレイをする方が性に合います」
と言ったとしたら、ほぼ確実に、野球好きやサッカー好きな人はいい顔をしないだろう。上は極端な例だが、似たような言い回しをしてしまって、後悔したことがある人もいるだろう。しかしながら、聞き手の気持ちを意識し、『言い回し』を変えることで、趣旨をそのままに柔らかく相手に伝えることも可能だ。例えば、以下の通り。
「華麗なチームプレイも悪くはないと思いますが、少なくとも僕は磨き上げた互いの技術をぶつけあう個人球技の方が心の芯から熱くなります」
こうした異なる『言い回し』を瞬時に使い分けることができるようになるためには、普段からその『言葉』が受信者にとってどのような感情を引き起こす結果となるのか想像するようにしておくといい。そして、外国語を学ぶ時、まずは単語や熟語を覚えなければ文章の読み書きができないのと同じように、きちんと本を読み、新しい単語や熟語、さらには『言い回し』を学ぶようにしておこう。
上の対策①〜②で述べた分解した「要素」を文章として構築する際、そして「短文で伝わる文章」を思い描く力を身につけるには、この対策③も非常に重要なものとなる。
まとめ
『え〜あ〜症候群』の発症原因は、基本的には「心の働き」であることが多いため、その「心の働き」につながる根本的な要素【準備不足・短文構築・語彙力不足】をきちんと意識・修得するようにすることで、少なくとも以前よりは格段に改善されるはずだ。
それでも『え〜、あ〜、』という間投詞が出てしまう場合は、本当に人前での発表が苦手なのかもしれない。しかし、「人前での発表が苦手=自分に対して自信がない」という構図が浮かび上がるため、自分に対して自信を持たせるために、積極的にスポーツや読書、友人とのコミュニケーションに勤しみ、自己評価を高めることも重要になるのだと思う。
ロジカルシンキングを身につけるためにも、僕自身もこういった本をもっと読んでいきたいと感じている。