街中で見かける「良いお店」と「悪いお店」ーお客で賑わうお店とお客が誰もいない静かなお店は何が違うのかー

“お客さんが来ない…”

fashion-690184_1920
街中を歩くと、毎日のように行列ができ、たくさんの客で賑わうお店がある一方で、客も疎らで、店員が欠伸をしているような閑古鳥が鳴いているお店も見かける。もちろん取り扱っている商品やお店のコンセプトは店ごとに異なるが、本当にそれだけが原因なのだろうか。今回は客目線で入りやすいお店とはどういった要素を持っているのかについてまとめてみた。

 

サンプルを見せる

house-753270_1280

お客さんは、必ずしも商品に対して十分な知識を持った状態で買い物に来るわけではない。お店に行って初めて出会う商品が山ほどあって、それらを幾つか見比べた後にようやく購買に至るかどうか判断するというプロセスを踏むことになる。その購買に至るまでのプロセスを作る一番の入り口は『サンプルを見せる』ことだ。綺麗にパッケージに包まれて、わかりやすいイメージ写真や機能一覧を貼り出す以上に簡単でわかりやすい方法だろう。

無印やニトリといった店舗の家具コーナーはまさにこの例にぴったり当てはまる。買って楽しいの前に、しっかりと目で見て楽しいを演出することができている店構えだと感じることができる。反対に、すべてきれいにパッケージ化されているようなレイアウトを中心としたお店はお客の興味を引く以前の話であることに気づいた方がいい。

 

実際に試せる

shopping-879498_1920

特に電気屋に多い気がするが、マッサージ機コーナーや電子ピアノコーナーに販売員が常駐し、『お試しになりたい場合は店員にお声掛けください』と書いているケース。これは最も悪い売り方のお手本とも言える手法だろう。特に『恥』を美徳とする日本国内においては、このような《売り手の論理は、買い手の不合理》とも言える売り方では、期待していた客足はどんどん遠のいていく。客がAmazonを始めとした多くのネットショップとは異なるリアルな店舗に求めているのは、【気軽に実機を試して、欲しくなった/興味を持った時に店員に声をかけたい】といった心理なのだ。顧客心理を前提に考えてみると、上のような店舗の手法は店側の『買う気が無いなら試すのもお断りだ』といった態度が「いいお店作り」とは真逆のベクトルであることに気付くだろう。

最近見かけた悪いお店の例としては、マッサージ機全てにカバーが掛けられていて、表に大きく『マッサージ機を試用されたい方は、お近くの従業員にお声掛けください』と書かれているJoshinや、店内の電子ピアノ全てに『お試しになりたい場合はお気軽に店員にお声掛けください』と書かれている上に、店員がギラギラした目で客の動向を見ていた山野楽器が挙げられる。

 

店員が売ろうとしない

bakery-saleswoman-291048_1920

何気なく洗濯機コーナーやパソコンコーナーに足を踏み入れると、“すすすっ”と忍び寄るように店員が近づいてきて、『お客様!いまそちらの商品は売れ筋なんですよ〜!!』などと言って声をかけてこられた経験がある人も多いと思う(ヤマダ電気のような電気屋に多い)。

正直言って、これこそ客として店に行った時には大変迷惑極まりない行為の代表格だろう。特に、そのコーナーに入った直後に声をかける店員は客のことが全く分かっていない。

客が声をかけてほしいタイミングは、商品に興味を持ち、他の商品と見比べ、時にはパンフレットで比較検討を始めた段階なのである。

電気屋だけでなく、服屋でも客の購買行動というのは基本的には変わらない。ゆっくりと商品を見比べ、性能や機能、見た目といった要素を確認してからようやく財布の中身を確認する。

その段階に至るまで店員はじっと待つ必要がある。実は、客が入りやすい店の条件の中には、「店員が何か別の作業をしていること」というものがある。これこそまさに、“何かあったら聞けるように店の中にはいてほしいけど、見比べている間はそっとしておいてほしい”という気持ちの表れだと感じる。

Appleストアは顧客心理がわかっているのか、お客から質問等で声をかけるまで店員から声をかけるようなケースがほとんど見受けられない。反対に、足を踏み入れるなり営業スマイルで「あれがオススメ、これがトレンド」と聞いてもいないようなことをペラペラと話す服屋は完全にアウトと言える。

 

物語がある

narrative-794978_1920

その店の成り立ちやコンセプト、創業者の逸話や想い等、案外客はそういったサービス・商品そのもの以外の要素も購買時の判断材料にしていることがある。人は思った以上に『物語』が好きなのだ。Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏やユニクロ創業者の柳井正氏、少し前だとfacebook創業者のマーク・ザッカーバーグのように映画化された創業者もいるくらいだ。確かに、創業者の物語なんて、言ってしまえばただのサクセスストーリー(もっと平たく言えば『自慢話』)に過ぎないこともある。ただ、それは語り方や題材にする箇所の問題なのだろう。

「どういう思いで、その店・その商品・そのサービスを立ち上げたのか」といった要素は顧客の心を掴み、さらにはブランド化への近道となることも忘れないでおきたい。

 

活気がある

tourists-915852_1920

『卵が先か、鶏が先か』と同じ論理な気がするが、少なくとも上のような客にとっての重要な要素が盛り込まれているお店には活気が生まれ、活気のあるお店には客が集まる。

“行列は行列を生む”

これは真理であって、顧客心理を分かっているお店だからこそ巧みに使いこなせる高等技術なのだ。池袋で行列のできるラーメン屋や、吉祥寺で人気のメンチカツといった「人が人を呼ぶ」ことを上手に活用して、活気の生まれたお店はさらなる活気を生んでいく。

 

生活を豊かにしてくれるイメージを与える

children-441895_1280

「売りたいものを売る」

これは売り手にとっては正しい考え方だが、客にとっては迷惑千万でしかない。客が欲しいのは、「売り手が売りたいもの」なんかではなく、『生活を豊かにしてくれる何か』に他ならない。売り手はそのお手伝いをするだけなのだ。客が商品を見て、その商品によって自身の生活が豊かになるか確信が持てない時に、そっと背中を押してあげることが店員の仕事である。最近発売された商品を並べて一つずつ機能を説明してほしいわけでは決してない。

おしゃれな服を買えば、恋人とのデートや友達との食事の際に「おしゃれな自分」を楽しむことができるし、出会ったことのないストーリー格言が書かれた本を読めば「新しい思考の扉」を開くこともできる。商品そのものの特性や見た目、値段は客が購買の意思決定を行う上で非常に重要な要素ではあるが、最終的な決定は上で述べた通り「自分の生活をどのように豊かにしてくれるのか」のただ1点なのだ。

 

最後に

shopping-mall-509536_1920

「お客の目線で店づくりができているか、品揃えが豊富か、何よりも実際に試させてお客の方から店員に声をかけたくなるような仕掛けを作ることができているか」

こういった基本的なことができず、売り手の目線で店づくりをしているうちは客足も遠のく。できるお店は一定のロスを覚悟の上で、【まずは店にお客が来てくれる】ことを意識したサンプル展示やお試しコーナーの設置、そして店員への教育を行い、「客にとって心地よい店構え」を作り上げているのだ。

店を作れば物が売れるという時代は昔の話。今は物に溢れ、似たようなお店や商品がひしめき合う中で差別化できる大きな要素と言えば、そのお店の店員と店内の雰囲気に他ならないのではないだろうか。

 

あわせて読みたい