“オタクがゲーム感覚で世界を救う話”ー映画ピクセル(PIXELS)を観た感想と評価を書き綴ってみるー

“パックマンやドンキーコングが襲ってくる?!”

クラシックアーケードゲームの天才だった主人公であるアダム・サンドラー演じるサム・ブレナーは、ゲーム大会でチャンピオンにあと一歩及ばず、ふてくされて自分の才能・可能性に蓋をしたまま、大人になってしまった。ゲーム少年であった頃のオタクっぽさを残したまま成長した彼は、身だしなみも、態度も、言葉遣いもイマイチ。それでも何となく仕事で出向いた家の奥さんにちょっぴり恋をし、振られる。そんな時に突然クラシックアーケードゲームのキャラクター達が地球に対し、武力攻撃を仕掛けてくる。

そんなハチャメチャなストーリーではある「ピクセル」だが、ジャンルとしてはSFコメディという印象だった。通常であればあり得ない設定だったり、あり得ない展開だったりする中で、どこか「あー、あり得る」と少しだけ納得しそうになる不思議な空気があったのは、やはり「ファンタスティック・フォー」や「ナイト・ミュージアム」、「ハリーポッター」等の監督をしていたクリス・コロンバスの演出によるものだったのかもしれない。

 

【評価(感想)】★★★☆☆(星3つ)

 

地球や人類の文化ついての情報を電波に乗せて、宇宙人との交流を図ろうとしていたプロジェクト。それを宇宙人が受信したものの、彼らは人類からの宣戦布告だと勘違いしてしまう。「パックマン」「ギャラガ」「ディグダグ」「ドンキーコング」「スペースインベーダー」と、送られた情報からテレビゲームについて知った宇宙人たちはそれらに出てくるキャラクターに姿を変えて地球を侵攻し始める。巨大なキャラクターが次々と現れ、都市をブロック化していく事態に世界はパニックに陥り……。
「シネマトゥデイ」より

 

「レトロゲームのキャラが襲ってくる」というアイディアありきのストーリー

352585_005

ストーリーが展開していくにつれて、“レトロゲームのキャラクターが襲ってきたらどうなるだろう”というアイディアを基に、ストーリー展開を考え、登場人物や役割を当てはめていったような作りであるように感じた。しがないケーブル修理の男が親友のよしみとはいえ、作業着姿でホワイトハウス近辺をうろうろしたり、大統領執務室に入ったり、バーで一緒に飲みに行くことは可能なのだろうか。さらには、 Navy SEALsに対し、襲いかかる宇宙からの侵略者への対策として1980年代のレトロゲームのプレイ方法を教授するといったハチャメチャな展開にまで発展するのは不思議というか、不可解というか。

 

全体的に脈絡がない

352585_007

少年時代の親友であるウィル・クーパーが何の説明もなく、アメリカ大統領になっているし、NASAが宇宙人に対して交流目的で地球や人類の文化についての情報を送ることになった経緯もはっきりと描かれてはいない。こういった物語の進行に関わる重要な要素が何の説明もなく突然現れては、登場人物達も皆んな平然と受入れていく様子は若干もどかしい感覚を覚えた。
それに、サム・ブレナーが恋をすることになるヴァイオレット・ヴァン・パッテン中佐という今作のヒロインについても、初めて遭遇した宇宙の物質について驚異の速さで分析し、対抗するための兵器作成にまでこぎつけることのできる能力を秘めているという驚き。

 

説明を求めてはいけない

これこそ、ある意味アメリカ映画らしい「SF要素を盛り込んだドタバタコメディ」とも考えられる。緻密な設定や裏付け、キャラクター心理の掘り下げよりも、勢いとアメリカンギャグをふんだんに盛り込んだ作りとなっている。
とはいえ、説明を求めない限りにおいては、変に理念とか想いをぶつける暑っ苦しさはなく、オタクたちが淡々と自分たちの持つ能力を活かして何故か世界を救えてしまったというシュールな面白さもある。期待値をグッと下げた上で、軽い気持ちで観に行くといいかもしれない。

 

万人受けする映画ではないかもしれない

映画そのものに対する期待値は人によって大きく異なるとは思うが、この映画に関してはなおさらのこと、「誰にとっても楽しめる最高の映画」と呼ぶには難点がある。映画の中にふんだんに盛り込まれているアメリカンジョークは元ネタを知っていたり、侮蔑をジョークと捉えたりできないと人によっては引くレベルだ。
それでも、パックマンやドンキーコング、ほんのちょっとマリオといった日本人にとってはとても馴染み深いキャラクター達が妙にリアルな3Dキャラクターとして登場し、画面の中で大暴れするという映像はこの映画ならではかもしれない。

 

おまけ(「レディ・リサ」がスマホアプリになってるらしい)

01

ブレナーとウィルの少年時代からの親友であるラドロー・レイモンソフ(自称「ワンダーボーイ」)は「Dojo Quest」という架空のレトロゲームの主人公であるレディ・リサに恋い焦がれていた。そんなレディ・リサを操作して遊ぶ「Dojo Quest」が何とiOSとAndroid端末用のスマホアプリとして無料でダウンロードすることができるとのこと。
ちょっと時間のある方は試しに遊んでみてほしい。

【参考サイト】

【スマホアプリ今日の1本】映画「ピクセル」から生まれた「Dojo Quest」

映画「ピクセル」、双剣の金髪美女「レディ・リサ」トレーラーを公開

「Game Watch」より

※映画販促ネタ用の無料アプリという印象だが、ドット絵のキャラを動かすのはとても懐かしい気がする。

あわせて読みたい