企業の有給休暇消化義務「5日」?!-それ以上に、他にもっと検討すべき課題は山ほどあるのではないか!-
“有給休暇5日どころか、サービス残業と休日出勤を無くしてよ…”
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どうも、七色たいよう(@nanairotaiyo)です。
有給休暇、きちんと消化できていますか?
2016年4月より、「有給休暇消化義務5日」へ
先日、Yahoo!ニュースのヘッドラインで、以下のような記事を見つけました。
厚生労働省は、2016年4月から社員に年5日分の有給休暇(以下、有休と表記)を取得させる義務を企業に課す方針だ。今通常国会に労働基準法改正案を提出する方向で調整を進めている。
新しい仕組みでは、年10日以上の年休を付与される社員(フルタイム社員のほか一部のパートタイム社員も含む)に年5日分の有休を取らせることを企業の義務とする。「義務化」といっても、これまでのように社員が既に5日以上の有休を取得している場合には、企業の義務は発生しない。例えば社員が自ら2日の有休を取得している場合に、年5日に満たない部分(この場合3日)を取得させる義務を企業側が負う仕組みだ。
(Yahoo!ニュース「企業の有給消化義務 「5日」で調整へ どんな意味があるのか?」より)
簡単に言えば、1年以内に「最低でも合計5日間の有給消化を義務とする」方針を2016年より企業に課すということです。
そこで、実際の有給休暇取得率と取得日数を厚生労働省がまとめている「平成26年就労条件総合調査結果の概況」にて調べてみました。
すると、労働者1人平均付与日数18.5日・平均取得日数9.0日・取得率48.8%という結果が、、、
“えっ?!私、そんなに有給休暇消化してない…”
こう思う方も非常に多いと思います。
僕もその中の1人ですから。
こういう数字を見るときには必ず「調査対象」にまで目を向ける必要がある。
この有給休暇に関する調査の対象は以下の通り。
調査対象
日本標準産業分類に基づく15大産業(平成19年11月改定)[鉱業,採石業,砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業,郵便業、卸売業,小売業、金融業,保険業、不動産業,物品賃貸業、学術研究,専門・技術サービス業、宿泊業,飲食サービス業、生活関連サービス業,娯楽業(その他の生活関連サービス業のうち、家事サービス業を除く。)、教育,学習支援業、医療,福祉及びサービス業(他に分類されないもの)(政治・経済・文化団体、宗教及び外国公務を除く。)]に属する常用労働者が30人以上の民営企業から、産業、企業規模別に一定の方法により抽出した企業
(厚生労働省「平成26年就労条件総合調査結果の概況」より)
ここからは、調査の対象が「正社員」に限定されたものであることは一切読み取れません。
そうなれば当然のことながら、契約社員・パート・アルバイト等の各種雇用形態を含めた調査結果となることが想定されます。
本来であれば、雇用形態別の数値を公表した方が、より日本企業における有給休暇の取得率が鮮明になるのだろうが、それをしない理由は至極簡単。
正社員による有給休暇の取得率が著しく低いのです。
この調査結果からすると「有給休暇平均取得日数9.0日」と今回ニュースとなった「有給休暇消化義務5日」について話が食い違ってきてしまいます。
「抜け穴」はたくさんあることを忘れてはいけない
“こういった制度や法律には「抜け穴」がある”
とはよく言ったもので、例えば企業が本当に有給休暇を5日労働者に対して付与すれば、厚生労働省に対して「うちの会社はきちんと言いつけを守っていますよ」とアピールをすることができます。
一方で、休んだ分の仕事が減るわけではないため、労働者は休日出勤やサービス残業をして補填しなければならなくなります。
休日出勤分のお休みを振替休日ではなく、有給から消化するように指示してしまえば、会社側は厚生労働省の指示を守っていることになるのです。
これを一言で言えば、労働者は厚生労働省と会社から『お休みごっこ』を強いられるに過ぎないのです。
「有給休暇買取義務化」の方がよっぽど現実的
そもそも、有給休暇を取得させなくても企業には一切デメリットはありません。
「消化の義務化」よりも、「買取の義務化」の方が、企業にとっても金銭的負担が発生するためよっぽど効果的です。
労働者の1人として言わせてもらえば、制度だけはせっせと整えて「労働環境改善に向けて頑張っていますアピール」をしても無意味です。
問題の本質をしっかりと捉えて、「本当に労働環境を改善するためには何をすべきか」という視点で政策を立案しなければ何の意味もないのです。