教育分野における『ICT教育』がなぜ進まないのかー本を読まない親が“勉強しなさい!”っていうのと同じことー
“これからの時代で生き抜くには、『ICT教育』が重要だ!”
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どうも、七色たいよう(@nanairotaiyo)です。
先日、関東圏の大学等向けの補助金説明会に参加しました。
改めて教育事業というのは、今後の日本の発展を担う次世代の育成という視点で、非常に重要な分野であり、日本政府も多額の補助金を投じてまで教育改革に注力しているのだと感じます。
特に近年は、デジタルネイティブ世代がこれからどんどん社会に羽ばたいていくため、早い段階からPCをはじめとした各種のデジタル機器、ウェブサービス、そして汎用的なソフトウェアの使用方法・活用方法を授業の中に組み込んでいくことが求められていくことは確実です。
文科省もICT教育の積極的導入を推進しており、こういった分野への補助金もしっかりと予算計上していることは見過ごせません。
・教育の情報化に関する基本情報等
・教育の情報化の推進のための取組
・学校教育の情報化の実態について
しかし参加者を見渡すと、パソコンはおろか、タブレットさえも持たず、各自で印刷した重くて分厚い資料をせっせと持参している人が大多数であったことに驚きと納得、悲しみと諦めを感じてしまいました。
“ああ、そうだった。そういう業界だったよな…”
思わず心の中で、ひっそりと呟きます。
大学職員の世界に新卒で飛び込んだ時、先輩職員や上司は皆、PCスキルが高く様々な情報端末を駆使して、学生が有益な学びができるような環境を整えていくような風土なのだろうという期待していました。
そんな淡い期待は1週間もいると音を立てるように脆くも崩れ去っていったのです。
大学教職員の世界は、未だに『紙とペン』の世界なのです。
もちろん、仕事柄、根拠資料や提出書類が多いこともあり、仕方のない部分もあります。
しかしそれ以上に、データベース管理やPDF化、各ファイルの保存方法や便利なウェブサービスの活用方法に至るまで、個人個人のPCスキルと裁量に任されてしまっています。
そのため、部署を異動したり、担当者が変わる度に一からそれらを整えなければいけないというジレンマに遭遇することが多いのです。
今では、デスクトップ型パソコンだけでなく、タブレット型端末や小型化されたノートパソコン、スマートフォンといった便利な端末が次々と登場しています。
学内では『これらを活用して学生の学びを深めよう!』という話だけは聞くのだが、それを『自分自身できちんと扱える職員』はほとんどいないと言っても過言ではありません。
先日、白犬お父さんがイメージキャラクターである某携帯ショップでiPhone6に機種変更手続きをしに行った際、事務手続きがiPadひとつで楽々と済んでしまったことにとても感心しました。
ついでに、店内を見渡すと、余計な書類(いわゆるドッヂファイルや平積みになった書類の山)を見かけることはなく、非常にすっきりとしたレイアウトを意識した作りになっていました。
こうして考えてみると、例えば『会議に出席して議事録を作成する』という場合に、紙とペンでメモしたことをデスクに戻って一から書き起こすのは旧時代的なやり方になりつつあります。
今後は、会議の中にタブレット型端末やノートパソコンを持参し、その場でたたき台となる議事録の原稿をベタ打ちし、デスクに戻ってから手直しした方がよっぽど早く仕事が片付くのです。
更に言えば、最近では音声データからのテキスト起こしをアプリベースで行なってくれるサービスまであるようで、ますます紙とペンの出番が減少していく可能性が高くなっていきます。
(iPhone版)
(iPad版)
そういった変革が大学内において遅々として進まないの一番の原因は『他の人がやっていないから』なのでしょう。
冒頭で言ったように、補助金の説明会に出席した人の9割近くの人が『紙とペン』しか持参していないのに対し、事前にタブレット端末に移した資料を活用していた人は1割いるかどうかでした。
また、学内の会議や数々の打ち合わせにおいても、未だに『紙とペン』が主体であり、ほとんどの教員も職員も新しい各種端末を自ら積極的に取り入れるつもりはないことが一目でわかります。
さながら、『本も読まないような親が、必死になって子どもに”勉強しなさい!!”』と言っているようなもの。
子どもたちは身近な大人の姿を見て、それを意識的・無意識的に学んでいきます。
『ICT教育が重要だ!』と声高に叫ぶ前に、自らがそれらを活用しないと意味はありません。
そうすることで初めて、子どもたちに対し『ICT』を使った”情報管理能力”をどのように伸ばす施策を講じることができるようになるのでしょう。
『日本はアメリカの10年前を歩いている』と言われるが、同様に『学校は一般企業の10年前を歩いている』のです。
少なくとも現状においては、『情報管理能力』を積極的に身につけていない教職員が意思決定の大部分を占めている以上、変革の波は、一気にやってくることはないでしょう。
だからこそ、今の20代から30代の教職員を筆頭に、積極的にデジタル機器を活用して、上手な情報管理手法の確立や本当の意味でのICT教育に対する土壌作りを進めていかなければならないのです。