映画「orangeーオレンジー」を観てきたよ-“もしも、あの時ああしていれば…”という思いが紡ぐ『後悔』と『選択』の物語-

“26歳になった私には、後悔していることがたくさんあります”

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少し遅くなったが、話題の映画「orangeーオレンジー」を観てきた。

普段恋愛映画をそれほど意識して観ることはないが、たまたま巷で話題だったのと、年の瀬に時間ができたのでこのタイミングで観た感想をまとめてみた。なお、原作版「orangeーオレンジー」は未読なので、素直に映画単体としてのレビューとなることをご承知おきいただきたい。

 

【チェック】

高野苺のコミックを基に、未来からの手紙によって運命を変えようと奮闘するヒロインの姿をファンタジックかつ爽やかに描く青春群像劇。手紙により10年後の自分が後悔していることを知った女子高生が、大切な人を救おうと行動する姿を映す。NHKの連続テレビ小説「まれ」の土屋太鳳と山崎賢人がヒロインと相手役で再共演。『君に届け』やテレビドラマ「鈴木先生」などに携ってきた橋本光二郎が、長編映画で初のメガホンを取る。土屋と山崎のほかにも、『マジックナイト』などの竜星涼や『神さまの言うとおり』などの山崎紘菜らが出演。

【ストーリー】

高校2年生の高宮菜穂(土屋太鳳)に、10年後の自分から手紙が届く。そこには、26歳になったときに後悔していることが数多くあること、転校生の翔(山崎賢人)を好きになるが、彼が1年後に死んでしまうことがつづられていた。当初はイタズラだと思った菜穂だったが、手紙に書かれていることが現実に起こり始める。菜穂は後悔しないため、そして翔を救うために行動を起こす。

シネマトゥデイ 映画「orange」 原作「高野苺」

 

評価★★★★☆(星4.5)

 

きっかけはただ一つの『後悔』

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主人公の高宮菜穂(役:土屋太鳳)は、とても消極的な女の子。自分から積極的に行動を起こすことが苦手な性格。高校2年生の始業式の日、通学路に咲き誇る桜に見とれていると、突然カバンに見知らぬ手紙が届く。

恐る恐る手紙を手に取ると、そこには差出人が「高宮菜穂」と書かれていた。人生初めての遅刻をしそうになった高宮菜穂は教室についてから、ゆっくりと手紙を開き、中身を読み始める。

 

「高宮菜穂様

高校2年生の私、元気ですか?

私は10年後の未来から手紙を書いています。」

 

中身を読み進めていくと、これから起こる出来事が書かれていて、実際にその通りになっていく。そして、続きにはこう書いてあった。

 

「26歳になった私には、後悔していることがたくさんあります」

 

これは後悔の物語。身近な友人と過ごす日々の中で、何も考えず、無意識に漠然と毎日が過ぎ去った結果、救えたはずの友人を救うための物語。僕も高校時代を振り返ってみると、たくさんの後悔を胸に抱いていることを思い出した。

“なんであの時、、、こうしなかったんだ”と悔やんで、それでも前を向いて必死に駆け抜けてきた。

でももし、、、

でももしも、あの後悔を「なかったことにできたら、未来は変わっていたのかなあ…」

そんな風に自分の青春と重ね合わせてしまい、心が揺さぶられたように思う。

 

“救えたはずの友人を救いたい”

 

そんな願いを込めて送られた手紙が10年前の「私」から届き、困惑しながらも一つずつ「後悔」を消すように努力を始める。

 

“あの時、ああしていれば…”

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何もしなければ、10年後の高宮菜穂にとっても『後悔』は、再び同じ『後悔』を生む。

 

“あの時のあれは、もっと別の方法があったんじゃないか?”

 

大好きな友人である「成瀬翔」の未来を救うため、手紙の指示に従い始める高宮菜穂。

一方、成瀬翔自身も「後悔」を胸に抱えていた。運命の岐路に立つことになる『始業式の放課後』。

 

「この日だけは、翔を絶対に誘わないでほしい」

 

10年後の自分からの手紙にはそう書いてあったが、楽しそうに笑う成瀬翔の姿を見て、

「なぁんだ、誘って良かったんじゃん」と安堵する高宮菜穂。この日が成瀬翔の心に『消し去ることのできない後悔』を生んでしまったことを後になって知る。

 

物事の多くは《後になって真実を知る》というケースばかりだ。選択に必要な情報が限られている中で、漠然と、漫然と、何となく感覚的に意思決定をしていく。常に理論的であるわけではなく、時に感情的になることもあって、それにより大好きな友人とケンカしたまま謝ることもできずに、後悔だけが胸に残る。

 

胸に後悔を残すくらいなら、「今この時、この瞬間を最大限に楽しむこと」に意識を向けることが大切なのかもしれない。

 

『選択』による変化

この物語は「後悔」から始まり、「選択」によって終わりを変えようとする物語だ。SFチックに言えば、“選択によってはあり得たかもしれない世界”として《パラレルワールド》を生み出していく物語。

僕らも改めて自らの人生を振り返ってみた時に、「あり得たかもしれない未来」というのが幾重にも笠利合わさっているように思えるはず。

 

・ダンスに真剣になってダンサーとして世界に飛び出していたかもしれない自分

・勉強を頑張って東大に入学していたかもしれない自分

・専門学校に入学して美容師やイラストレーターになっていたかもしれない自分

・大手企業に入社して海外転勤をしていたかもしれない自分

 

考えれば考えるほど、「あり得たかもしれない未来」というのは無限に出てくる。全てのきっかけは「その時その瞬間の自分の選択次第」なのだろう。

 

映画では、高宮菜穂・須和弘人・茅野貴子・萩田朔・村坂あずさといった友人たちが成瀬翔の未来を変えるために「最悪の未来」に達するはずであった“選択”に逆らっていく。

その選択によって、少しずつ起こる現実と手紙の内容が変わり始め、最後は「手紙の内容と全く違い出来事」が起こったりもする。その時に彼らが起こす行動は…。

 

キャスト一覧

キャストは以下の通り。今回は俳優・女優一本で製作されているため、単純に作品そのものの魅力で戦っているように感じ、とても応援しがいがあるように思う。

俳優・女優ごとの演技力についてはそれぞれ感じるところもあるだろうが、作品全体の雰囲気などはとてもよくまとまっていた。

 

《キャスト一覧》

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・高宮菜穂(役:土屋太鳳)

・成瀬翔(役:山崎賢人)

・須和弘人(役:竜星涼)

・茅野貴子(役:山崎紘奈)

・萩田朔(役:桜田通)

・村坂あずさ(役:清水くるみ)

※左から順に

せっかくなので、この後原作「orange(オレンジ)」も読みたいと思う。ついに完結編となる最終巻も発売され、全巻一気読みするならまさにこのタイミングだろう。

1冊1冊のボリューム(厚み)はかなりありそうなので、じっくりと、ゆっくりと、物語の世界に入り込んでいきたいと思う。

 

 

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